毎月必ず出ていく固定費の一つに、電気代があります。
季節によって変動はありますが、家庭によっては月10,000円前後かかっているケースも少なくありません。前回は「スマホ代を配当で払えるか」を検証しましたが、今回はスケールの大きい電気代で同じ考え方を試してみます。
このスマホ代を株主配当だけで払うことはできるのか。今回は、NISAの成長投資枠で電力株を購入し、その配当金で月10,000円の電気代をまかなう場合を試算してみます。
シリーズ:
【検証】スマホ代を株主配当だけで払えるのか-通信株編-
■今回の前提
今回は、電気代を月10,000円、年間12万円として試算します。対象にするのは、電力株として分かりやすい以下の3銘柄です。
・関西電力
・九州電力
・中部電力
株価は2026年6月時点の終値を使います。配当は各社の公表している年間配当予定・予想をもとに計算します。
また、NISAの成長投資枠で購入し、配当金を非課税で受け取る前提とします。通常の特定口座では配当金に約20%の税金がかかりますが、NISAで条件を満たして受け取れば、配当金が非課税になります。
■月10,000円の電気代を配当で払うには?
月10,000円の電気代を年間配当で払うには、年間12万円の配当金が必要です。では、電力株をどれだけ持てばよいのでしょうか。
100株単位で購入する前提で、必要株数を切り上げて計算すると、次のようになります。
| 銘柄 | 年間配当 | 必要株数 | 必要投資額 | 年間配当額 |
|---|---|---|---|---|
| 関西電力 | 1株80円 | 1,500株 | 約360万円 | 約120,000円 |
| 九州電力 | 1株50円 | 2,400株 | 約393万円 | 約120,000円 |
| 中部電力 | 1株70円 | 1,800株 | 約477万円 | 約126,000円 |
数字だけを見ると、最も少ない投資額で年間12万円の配当に届くのは関西電力です。
関西電力の場合、必要株数は1,500株。必要投資額は約360万円です。九州電力は株価が低く少額から買いやすい印象がありますが、1株あたりの配当金も小さいため、必要株数は2,400株になります。必要投資額は約393万円です。
中部電力は1株あたりの配当はやや大きいものの、株価も高いため、必要投資額は約477万円になります。
■スマホ代との大きな違い。NISA枠を超える
前回検証したスマホ代(月5,000円)は、最も少ない銘柄で約145万円。NISAの成長投資枠(年間240万円)の中に余裕を持って収まりました。
しかし、電気代(月10,000円)は事情が違います。今回計算したどの銘柄も、必要投資額がNISA成長投資枠の年間240万円を超えてしまいます。
これは固定費の金額が大きくなるほど、配当だけでまかなうために必要な元本も大きくなるという、ごく当たり前の構造です。スマホ代と同じ感覚で「NISA1本で一気に組める」というわけにはいきません。
この場合の現実的な対応は、大きく2つあります。
1つは、成長投資枠を2年に分けて使うことです。成長投資枠は年間240万円までという上限がありますが、これは「1年間の上限」であって「一生の上限」ではありません。1年目に120万円分、2年目に残りを買う、という形であれば、関西電力の約360万円も無理なく組み立てられます。
もう1つは、つみたて投資枠も併用することです。NISAには成長投資枠(年間240万円)とつみたて投資枠(年間120万円)があり、合計で年間360万円まで非課税で投資できます。成長投資枠だけで個別株を買い、つみたて投資枠ではインデックスファンドを積み立てるといった組み合わせも可能です。
いずれにしても、「今年中に一括で電気代分の配当株を買い切る」と考えるより、複数年に分けて積み上げていく前提で計画を立てた方が無理がありません。
■月2万円プランなら必要額はおおむね2倍
今回は月10,000円の電気代を基準にしています。オール電化住宅や、夏冬の冷暖房使用量が多い家庭では、月20,000円前後かかっているケースも珍しくありません。
その場合、必要な配当金も12万円ではなく24万円です。つまり、必要な株数や投資額も単純計算ではおおむね2倍になります。
関西電力なら720万円前後、中部電力なら950万円前後という規模になり、個別株1本でまかなう発想からは現実的に距離が出てきます。ここまで来ると、配当だけで全額を狙うより、一部を配当でカバーするという考え方の方が無理がないでしょう。
■注意したいのは減配と株価下落
もちろん、配当で固定費を払うという考え方には注意点もあります。配当金は確定したものではなく、今回使った数字も各社が公表している予定・予想です。業績が悪化すれば、将来的に減配される可能性もあります。
また、株価が下がれば、配当金を受け取っていても評価損が出ることがあります。配当株投資は、銀行預金とは違います。元本保証ではありません。
電力会社は生活インフラに近い事業ですが、それでも燃料価格の変動、原子力発電所の稼働状況、電力市場の制度変更などの影響を強く受けます。「電力株だから安全」と決めつけるのは危険です。実際、近年は燃料費調整制度の影響や原子力の稼働状況によって、各社の業績・配当方針が大きく変動してきました。
■まずは1ヶ月分の電気代を目標にする
いきなり年間すべての電気代を配当で払おうとすると、必要な投資額は360万円以上になります。これは決して小さな金額ではありません。
しかし、まずは1ヶ月分の電気代を配当で払うと考えれば、かなり現実味が出てきます。月10,000円の電気代なら、年間10,000円の配当があれば、1ヶ月分をまかなえます。
たとえば関西電力なら200株で年間16,000円、九州電力なら200株で年間10,000円。この程度であれば、いきなり年間分を狙うよりも、目標としては分かりやすいはずです。
投資は一気に生活費をゼロにするものではありません。まずは1ヶ月分。次に3ヶ月分。そして、いつか年間分。このように固定費を少しずつ配当で置き換えていく考え方の方が、長く続けやすいと思います。
📝 編集長メモ
投資の面白さは、生活の中にある支出を別の収入で置き換えられるところにあります。電気代を払うだけの人から、電力会社の配当を受け取る人へ。この視点の転換は、資産形成を考えるうえで大きいと思います。もちろん、株には値下がりリスクも減配リスクもあります。電気代をただの支出で終わらせるのか。それとも、将来の配当収入を作るきっかけにするのか。固定費を見る目が変わると、投資の見え方も変わってくるはずです。
💰 編集長の儲け話
電気代を配当で払うなら、まずは自分の年間電気代を計算することが大切です。月1万円なら年間12万円。今回の試算では、関西電力なら約349万円、九州電力なら約393万円、中部電力なら約508万円で、年間12万円前後の配当が見込める計算になりました。投資金額は決して小さくありません。ただ、AI需要により今後電力需要は大きく拡大することを考えれば、電力株はまだまだ上昇の余地はあります。
まずは1ヶ月分の電気代を配当で払える状態を作る。そこから少しずつ買い増し、3ヶ月分、半年分、年間分と増やしていく。固定費を配当で置き換える発想を持つと、投資はただの値上がり待ちではなくなります。毎月出ていくお金を、将来の収入で少しずつ取り戻す仕組み作りになります。
※本コーナーは編集長個人の見解です。投資等の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
