トランプ大統領はG7サミットにおいて、イランとの停戦合意文書への署名を発表した。これにより、事実上閉鎖状態となっていたホルムズ海峡は再び開放へ向かうこととなる。
世界の原油輸送のおよそ2割が通過する重要航路だけに、市場も歓迎ムードとなり原油価格は下落した。まずは世界経済にとって一安心と言えるだろう。
しかし、このニュースを見て筆者が思い出したのは、40年以上前の出来事だった。
原油価格は乱高下した
ホルムズ海峡の混乱は、真っ先に原油市場を揺らした。閉鎖懸念が高まると原油先物価格は急騰し、一時は100ドル超えを試す展開となった。ホルムズ海峡は世界の石油・天然ガス輸送の約2割が通過する要衝であり、市場が過敏に反応するのは当然である。
しかし停戦合意と海峡再開の見通しが出ると、原油価格は一転して下落した。ブレント原油は1バレル77ドル台、WTIも70ドル台まで下落している。
つまり今回のホルムズ海峡危機は、軍事衝突だけではなく、世界中の投資家を振り回した事件でもあった。
「撃つ前に上がり、開く前に下がる」
原油市場は、現実よりも先に恐怖と期待を織り込むのである。
今回の閉鎖はどれくらい続いたのか
今回のイラン戦争は2026年2月末から本格化した。ホルムズ海峡では航行制限や安全上の懸念が高まり、一時的な再開と制限を繰り返しながら緊張状態が続いた。
そして6月の停戦合意によって、ようやく本格的な再開への道筋が見えてきた。世界経済にとっては約3か月半にわたる不安定な状況だったと言える。
歴史は繰り返される
しかし、ホルムズ海峡の混乱は今回が初めてではない。1980年代のイラン・イラク戦争では「タンカー戦争」と呼ばれる事態が発生した。両国は互いの石油輸送を妨害し、各国のタンカーが攻撃対象となった。
ペルシャ湾は世界有数の危険海域となり、原油価格は乱高下した。各国は代替調達先の確保に奔走し、アメリカやイギリスを中心とした各国海軍が航路防衛に乗り出すこととなる。
驚くことに、今回のニュースと並べてもほとんど違和感がない。
海峡が脅かされる。
原油価格が上がる。
世界が慌てる。
各国海軍が動く。
そして海峡が再び開く。
40年以上経った今も、世界は同じ場所で同じ問題に悩まされているのである。
イランの危機に、日本はどうしたのか
実は日本とイランの関係を語る上で欠かせない出来事がある。1953年の「日章丸事件」である。
当時、イランは石油国有化を進めていたが、これに反発したイギリスは事実上の海上封鎖を行っていた。イラン産原油を買う国は少なく、多くの企業が手を引いていた。
その中で動いたのが出光興産だった。
出光のタンカー「日章丸二世」は、イギリスの圧力が続く中でイランのアバダン港へ向かい、原油を積んで日本へ戻った。世界が距離を置く中で、日本企業が石油を買いに来たのである。
この出来事はイラン側にも強い印象を残したと言われる。アバダン港では歓迎を受けたとも伝えられている。
また一説には、この取引でイラン側が石油代金を免除したとも語られている。それほどまでにイラン側は日本を特別な取引相手として見ていたのかもしれない。
イランと日本の有効に関して、詳しい経緯については関連記事をご覧いただきたい。
関連記事:なぜイラン人は日本に親日的なのか? 石油がつないだ40年の友好関係
日本に対する見方はどう変わるのか
今回の停戦に際し、トランプ大統領は日本について、
「日本は戦いに加わりたくないようだ」
との趣旨の発言を行った。アメリカ側から見れば、日本は同盟国でありながら軍事的な関与に慎重だったと映ったのかもしれない。
しかし、見方を変えれば別の景色も見える。イランから見た場合、日本は敵側に立たなかった国でもある。さらに今回、イランは日本向けタンカーの航行に一定の配慮を示したとも報じられている。
もちろん国家間の関係は単純ではない。だが少なくとも、日本とイランの間には40年以上積み重ねてきた歴史が存在する。
アメリカから見れば不満が残ったかもしれない。しかしイランから見れば、日本への信頼が少し増した出来事だった可能性もあるだろう。
📝 編集長メモ
日本は今月、原油調達先の100%代替確保を達成したと発表している。今回の危機において、日本の経済安全保障の底力を示したと言えるだろう。しかし本当の問題は、ホルムズ海峡再開後である。元に戻せば調達コストは下がるが、リスクが消えたわけではない。かといって戻さなければ、イラン側に不満が残る可能性もある。さらに他国からの調達を続ければ、将来再び必要になった際に「日本はどうせすぐ離れる」と見られるかもしれない。危機を乗り切ったことは評価できる。だが日本の本当の正念場は、これから始まる外交判断にある。危機の最中に何をするかより、危機が終わった後に何をするかの方が難しい。
💰 編集長の儲け話
今回の停戦合意を受け、日経平均は上昇している。不安材料が後退したことで、下落していた銘柄もある程度は戻していくだろう。ただ私が注目しているのは、こうした相場全体が上昇する局面で逆に売られやすいグロース株である。資金は大型株やプライム市場へ流れやすく、その影響で一時的に下落することがある。しかし企業の価値そのものが変わったわけではない。そこで拾えるかどうかが、将来の差になる。例えばソフトバンク(9434)は209円前後で年間配当8.8円となっており、配当利回りは4%を超える。こうした局面で冷静に買えるかどうか。それが投資で勝つ人と負ける人の分かれ目だと私は思う。
※本コーナーは編集長個人の見解です。投資等の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
